私の時よりも……苦しかったのだろうか?
辛かったのだろうか?
違う意味で、課長を気になり始めた。
しかし入社から1週間過ぎようとしたとき
そんな同情や気持ちは、消え去りそうになった。

「二階堂……お前。一体何を学校で学んできたんだ?
誤字が多い上に無駄な文を詰め込み過ぎだ。
お前の脳みそは、すっからかんなのか!?」

すっからかんって……。
そんな言い方しなくても。
課長の容赦ない叱られ方にグサッと
胸が刺さるような思いだった。

新人だろうが、ベテランだろうが
まったく物怖じせずに容赦なく怒鳴り付ける姿は
確かに鬼課長という名に相応しい。

「すみません……すぐに書き直します」

周りは、怒られまいとビクビクしているのが
背中からも伝わってきた。
怖いを通り越して辞めたくなってきた。

「だったら、さっさと直せ。それと野々村。お前もだ!!
まったく。最近の新人は、こんなことも
まともに出来んのか!?」

課長の怒りは、同期の野々村君にもいく。
ひぃぃっ……やっぱり怖いし辞めたい。
あんなのパワハラじゃない!!

散々叱られてしゅんと落ち込んで
席に戻ろうとした野々村君は、
よほど叱られたことに対して気に入らなかったのか
聞こえるか聞こえないかの小さな声で

「なんだよ……障がい者のくせに。
偉そうに」

言ってはいけないことを呟いてしまった。
私は、それを聞いて驚いた。だが、その瞬間だった。
デスクを思いっきり叩きつける課長。
その音に身体中が震え上がった。

課長は、ギロッと私達を睨み付けた。
その目は、鋭く恐怖を覚えるほどだった。

「ほう……?障がい者のくせにか?
なら、その障がい者の俺に叱られる
お前は、何だ?
健常者でもさぞかしご立派な存在なのか?」

「うっ……それは……」

「いいか?社会に出たら障がい者も健常者もない。
それよりも何も努力もしないで
お前みたいにグチグチ言っているような奴は、
会社には必要ない。
悔しかったら、自分の仕事を完璧にこなしてから言え。
他の奴らもそうだぞ。ダラダラと仕事をするな。
お前らは、ご立派な健常者様なら出来ることだよな?
だったらさっさと働け!
出来ない奴は、サービス残業だからな」