「いいえ……確かに少し驚きましたが。
気持ちが悪いなんて思いません。それよりも
その……義足。あれが、さっきから気になって。
触ってもいいですか?」

実は、さっきから義足が気になって仕方がなかった。
脚のない課長の姿に驚いたのは、本当だ。
でも、どんな姿をしていても私にとったら
課長は、課長だ。
気持ち悪いなんて思うわけがない。

課長に許可をもらうと触ってみた。
これが義足!?
競技用の義足と違いバネみたいにはなっていない。
ちゃんと脚の形になっていた。
確かに義足なのだが、思ったより
本物の脚に近い。ゴムっぽい?

「これは、シリコーンの素材で出来ていて
少しでも脚の近い状態に構造をされている。
競技用と違い走ったり出来ないが
普通に歩いたり出来る」

課長は、そう言って詳しく説明をしてくれた。
そうなんだ?
初めて見る義足は、よりリアルに見えるように
なっていて凄いと思った。

「何だがパッと見たら本物っぽいですよね」

「あぁ、だからデメリットもあってな。
パッと見たところ分からないから、うっかり
そのまま置いておくとビビられる。
俺の母親も驚いて悲鳴を上げたことがあった」

「えっ~それは、リアルに怖かったでしょうね。
脚が落ちているように見えるし……」

確かにリビングなどにあったら
一瞬バラバラ死体かと思ってビビってしまうだろう。
私でも悲鳴を上げてしまう。

「笑い事でないぞ。
置く場所にも気を遣うのだからな」

課長は、呆れたように言ってきた。 
そう言われても……課長の失敗談は、おかしくて
可愛らしいと思ってしまう。

「すみません……フフッ……」

また、笑ってしまった。
さすがに笑い過ぎたのか課長は、眉を寄せてきた。

「とにかく、この話は終わりだ。
朝ご飯の支度は、出来ているから食べるぞ」