鬼課長が笑うのは、反則だと思う。
撫でられた頭が……熱い。
このドキドキする気持ちは、何だろうか?

「それは、恋ね!」

「は、はい?」

その後の練習は、無理しない程度に走り
終わらすと更衣室で綾音にさっきの出来事を話した。
するとそんなことを言ってきた。

私が、課長に恋!?
えっ?いやいや……そんなはずは。
怖いはずの課長。でも、優しいところもあって
凄い努力家で……。

色々と考えている内に
自分の気持ちが分からなくなってきた。
私は、課長のことをどう想っているのだろう?
分からない……。

「そんなの……分からない」

「あらあら、自覚なし?まぁ、少しずつ
自覚して行けばいいのじゃない?まだまだ
たっぷりと時間があるのだし」

綾音は、そう言うとニヤニヤと笑ってきた。
面白がっているし。
しかし、そんなこと急に言われても困ってしまう。
そもそも、それで恋と決めつけていいものなの?

ただ意外過ぎる素を知ってしまっただけで
興味本位かもしれないし……。
その時は、自分にそう言い返した。
だが翌日。会社でもそのことばかり考えていた。

チラッと課長を見てみる。
かかってきた電話に対応していた。
会社では、鬼課長と言われているが上司からも
信頼をされているらしい。

そういえば課長って恋人とか居るのだろうか?
独身だし居ないと思っていたが……もし恋人が居たら?
そう思ったら胸がズキッと傷みだした。

あれ?何だか気持ちがモヤモヤする。
自分の気持ちに違和感を覚えた。
すると向かい側に座っていた同期の紺野さんが

「ねぇねぇ二階堂さんって最近。
課長ばかり見てるわよね?もしかして
課長のことが好きなの?」