「それも一理ある。だが心が折れそうになったとき。
俺は、あるDVDやネットを観るようにしていた」

あるDVD……?それは、何だろうか?
私は、悩んでいると課長は、教えてくれた。

「篠原コーチが選手として出場していた
パラリンピックだ。
篠原コーチも元・パラリンピックの
銀メダリストだったからな」

「えぇっ?篠原さんがですか!?」

えっー!?
まさか、篠原さんまで凄い選手だったなんて
驚きだった。二度目の衝撃だった。

「俺は、篠原コーチに影響を受けた。
同じ立場なのに負けずに走り続ける姿を見ていたら
自分は、スタート地点にすら
立っていないことに改めて気づかされた。
努力して出来ないのならきっぱりと諦めがつく。
だが、努力すらしてもいないのに
最初から諦めたりグチグチと言う奴は、俺は嫌いだ。
自分のプライドが許さない。
そう思えたら前に進むことが出来た。二階堂。
お前は、まだスタート地点すら立っていない。
まだ諦めるには早いぞ」

真っ直ぐ私を見て言ってくれた。
励ましてくれてるだけかも知れない。
だけど私の心には、大きく響いてきた。

課長だって、こんなに辛い環境でも
負けずに頑張ってきたんだ。
私より何倍も辛いはずなのに……。

確かに私は、まだスタート地点にも立っていない。
グチグチ言い訳して、諦めてばかり。
こんな自分が大嫌いだった。

私も、もっと努力をしたら同じスタート地点に
立てるのだろうか?
私も努力して走れるようになりたい……。

「は、はい。私もっと頑張りたいです」

自分の気持ちを正直に伝える。
勇気が居たけど自分の意思だった。
すると課長は、また私の頭を優しく撫でてくれた。

「あぁ、頑張れ」

クスッと私に微笑みかけてくれた。
その微笑みにドクンッと心臓が高鳴った。