篠原さんの言葉にハッとする。
そして慌ててスタンバイした。
篠原さんの合図と共に思いっきり走り出した。
だが頭の中は、課長と夏美さんとの
ツーショットばかり浮かんでいた。
集中しなくちゃあ……。
そう思うのだが集中が出来てなかった罰なのか
真ん中まで来た時に靴ヒモを踏んでしまい
前に倒れそうになった。
慌てて踏ん張るがズキッと右足が傷み支えられず
前に転倒してしまった。
「……キャアッ!!」
結局、派手に転んでしまった。
起き上がるが右足がズキズキと痛む。
ひじも擦りむいて血が出ていた。
「大丈夫か!?二階堂さん」
「二階堂!!」
すると篠原さんより先に課長が私に
駆け寄ってくれた。
「ったく、集中していないからだ。
あぁ……血が出ているな」
呆れたように叱られてしまう。
せっかく久しぶりに走って怪我するし
課長に怒られるなんて散々だ。
やっぱり……まだ治りきれていないんだ。
傷さと派手に転んだ恥ずかしさで
どうにかなりそうだった。涙が溢れそうになる。
すると、それに気づいた課長が
「右足が傷むか……?」と尋ねてきた。
私は、涙を溜めながらコクりと頷いた。
でも本当に痛いのは、心の方だった。
やっぱり……私には、もう走るのなんて無理なんだ。
一生まともに走ることなんて出来ないんだ!
情けない……自分が。
心が折れそうになる。
頑張っても無駄なんだと思えて……。
すると何を思ったか課長は、私をお姫様抱っこしてきた。
えぇっ……!?
「えっ!?ちょっと……課長?大丈夫ですから」
私は、驚いて慌ててしまう。
恥ずかしさとまさか課長にお姫様抱っこをされるなんて
夢にも思わなかったから頭の中が真っ白になった。
「痛くて歩けないのだろ?篠原コーチ。
すみませんが、コイツを医務室まで連れて行きます」