私……二階堂結衣は、学生の頃に絶望した。
インターハイの優勝を目指して今まで
頑張ってきた矢先、交通事故に遭った。
命に別状は、無かったがその代わり足の怪我は、
手術をしてボルトを入れることに。
それが原因で出場することも速く走ることも出来ずに
引退をした。
日常生活には、不便はないが
もう前のように走れなくなったからだ。
あんなに一生懸命やってきたのに。
悔しくて辛くて……たくさん泣いた。
陸上の物は、全て捨てて
それに関係のあるモノは、見ないようにして
過ごす日々。
ろくな趣味もなく無気力でしかない。
やる気も起きずダラダラと
生活を過ごしていた。すると呆れた母に
無理やり大学を受験させられた。
そして数年後。卒業を迎えると今度は就職問題。
なかなか就職先が見つからず
お先真っ暗な人生に嫌気を差していたら一社だけ合格。
その会社で凄い人に出会ってしまった。
まさか、のちに私の人生に大きく関わるなんて
この時は、夢にも思わなかったけど……。
「あの……今日から営業課に配属されました
二階堂です。よろしくお願いします」
入社して当日。
深々と頭を下げて私が担当になる課長に
改めて自己紹介した。
「……知っている。面接をしたのは俺だ」
いや、確かにそうだが……挨拶って大事じゃない。
ぶっきらぼうに言い返されたのは、
日向課長だ。30代後半ぐらいだろうか?
高身長で鋭い目付きが特徴的だ。
そして睨まれるとかなり怖い……。
嫌だなぁ……この人の部下になるのは。
「一通り集まったな。部署まで案内するから
着いてこい」
課長は、そう言うと前を歩き出した。
私の配属された営業課は、私を含めて
4人配属されることになった。
ハァッ……ツイてない。
ため息混じりに歩いていると
前に歩いている課長の歩き方に少し疑問を持った。
右足の歩き方に少し違和感があった。
庇いながら歩いている。癖だろうか?
まぁ、別に興味がないし。どうでもいいけど……。
それよりも所属先を替えてくれないかしら。
私は、そんなことばかり考えていた。
すると隣に居た同期の女性が私に話しかけてきた。