「ったく、最近の奴らは……」

凄い……課長。
生意気そうな男子高校生達を謝らすなんて
私は、感心しながら見ていた。
すると松岡さんが申し訳なさそうに

「すみません。僕のせいで
皆さんにご迷惑と嫌な思いをさせてしまって」

私達に謝ってきた。それは、違う。
松岡さんは、何も悪くないのに……。
戸惑う私と違い課長は、松岡さんの肩を
ポンッと叩いた。

「違う。今日は、お前らと共有すると決めている。
こんなのは、想定内だ。
好きでやっている事だから気にする必要はない」

気にするなと優しい言葉をかけていた。
課長のそういう人を気遣える優しさが私は、好きだった。

「ありがとうございます」

松岡さんは、嬉しそうに笑った。
下手な慰めより、課長みたいに
前向きな言葉の方が嬉しいだろう。
2人を見ていて私は、まだまだなぁーと思った。
もっと勉強して役に立ちたい。
そう新たに決意を胸に秘めた。

その後、電車が来たので慌てて乗り込むと
目的地まで向かった。しかし、また驚くことになる。
えぇっ!!松岡さんがよく行く場所って映画館なの!?

なんと映画館だったのだ。
視覚障害があるのにどうやって観る気だろう。
いや、それよりも楽しめるのだろうか?

「そういえば松岡は、無類の映画好きだったな」

「はい。昔から映画が好きで
今も弟に付き合ってもらってよく観に行きます。
今日は、皆さんと観たくてこれを選びました」

弟さんと観に行っているんだ!?
仲がいいのだろうなぁ……。
松岡さんと同じタイプの方なのかしら?

「弟さんと仲がいいのですね?」

夏美さんも同じことを思っていたらしく頷いていた。
私と一緒で気になるのだろう。