えっ……あ、そういえば。松岡さんは、御曹司だった。
確かに頼めば送り迎えぐらいしてくれるわよね。
松岡さんは、クスッと笑った。
「フフッ…それだと夏美さんと会えなくなっちゃいますよ?
時間を有効に使わないとね」
「さすが……ペテン師」
えぇっ?ってことはわざと
通勤電車にしているってこと!?
送り迎えを頼まないのは、
夏美さんに会うためにわざとやっていたの?
私は、それを聞いて驚いた。チラッと夏美さんの方を
見ると彼女も知らなかったらしく頬を染めていた。
あ、照れてる。
そうか……そうすることで2人の時間を必然的に
作っていたのね。
松岡さんの策略に驚いたが何だか微笑ましかった。
しかし、その時だった。
階段を上っている松岡さん達の後ろを
男子高校生が追い抜こうとしてぶつかった。
「ったく、ちんたら歩いてんじゃねぇーよ!?」
「見えないなら電車に乗るな。うぜー」
ぶつかっておいて謝りもせずに
障がい者を馬鹿にした態度で松岡さんに言ってきた。
な、何なの!?人にぶつかってきて……あの態度は。
私は、その態度に腹を立てた。
「ちょっと……」
私が、そう言いかけたとき課長が
ガシッとその男子高校生の腕を掴んだ。
えっ……?
「人にぶつかった時は、まずごめんなさいだろーが!?
高校生にもなってそれぐらいも出来ないのか?
謝るのなら幼稚園児でも言えるぞ。謝れ」
ギロッと凄い目付きで睨みつけた。
それは、もう魔王のように怖かった……。
「ご、ごめんなさい……」
あまりの恐怖に男子高校生達は、慌てて
謝ると逃げ出すように行ってしまった。