一つ一つ話す表情を見ていろんなことを
乗り越えて今の課長になったのだろうと思った。
辛さや苦痛に背を向けずに
ひたすら立ち向かって行ったから。
「俺には……無いよ。
そんな誇りも……仲間も……」
翼君は、ギュッと布団を握り締めた。
今にも泣きそうな表情で……。翼君。
「いいや。これから見つければいい。
君の人生は、まだ始まったばかりだ。
勝手に限界を決めつけて終わらしたらダメだ!
これから、たくさんの人に出会い仲間を見つけて行くんだ。
そのためにも……俺が君の架け橋になろう。
きちんと前を向いて歩けるように」
「俺の架け橋……?」
課長は、力強く翼君に向かって言った。
その目は、真剣だった。
「そうだ。例えハンデを持っていても
諦めなかったら、必ず夢が叶うって。
違う道だとしても君の目標になるような
架け橋にしてみせる。
だからパラリンピックに翼君も来てほしい」
課長は、そう言うとチケットを出して見せた。
パラリンピックのチケットだ。
「……行かねぇーよ!」
また翼君は、そっぽを向いてしまった。
行きたくないと拒否る翼君だったが
課長は、構わずにチケットをテーブルに置いた。
「まだ時間はある。
ゆっくり考えて決めるといい。
俺は、君が応援に来てくれることを待っている」
課長は、それだけ言うと病室から出て行った。
私も頭を下げると部屋から出た。
「翼君……来てくれるでしようか?」
横を歩きながら課長に心配そうに聞いた。
来てくれたら嬉しいけど
あんなに頑なに拒んでいたし……。
「絶対に来るさ。アイツは、変わらずにいい目をしている。
まだ迷いはあるが変わりたいと自分の中で
思っているのなら必ず来るだろう。
俺は、そう信じている」
課長は、前を向きながらそう言った。
翼君を信じているんだ。必ず来てくれるって。
それに……。
あの頃の自分に重なる翼君を見ていて
今の自分は、どうなのだろう?と比較をした。
前を向けるようになった。