「もっと言ってやって。日向君」
課長の言葉に源さんの奥さん・春子さんが
応援していた。春子さん……。
私は、苦笑いしながらそれを聞いていた。
すると松岡さんがニコッと笑う。
「まぁまぁいいではないですか。
まずビールでもいかがですか?」
しかし、いつも源さんが誘ってくるのに
松岡さんから誘って来るなんて初めてだ。あれ?
よく見ると篠原さんが居るのに夏美さんがいない。
松岡さんの誘いなら喜んで来ると思うのに。
私は、席に座ると篠原さんに尋ねた。
「篠原さん。今日は、
夏美さんと一緒ではないのですか?」
「あぁ、松岡君が夏美を呼ばないでほしいと
頼まれてね。私も理由を知らないんだ」
「えっ……?どうして?」
夏美さん抜きで話って……?
彼女は、松岡さんのことが好きなのに
誘われないなんて可哀想だ。知ったら落ち込みそう。
何だか複雑な気持ちになった。
私と課長の分のビールと料理が来ると
松岡さんが改めて話を切り出してきた。
「実は……僕が皆さんを呼んだのは、他でもない
夏美さんのことなんです」
夏美さんのこと?一体何だろうか!?
色々考えるが、いい話だといいけど。
「夏美が……どうしたんだ?」
篠原さんも自分の娘のことなので
気になっているようだ。
すると松岡さんは、少し照れたように笑う。
「特に篠原さんには、聞いてほしくて。
日向さんの影響もあるのですが、僕も今年の
パラリンピックで金メダルを取ることが出来たら
勇気を出して夏美さんに告白しようと思っています」
えっ……えぇっ!?まさかの両思いだった。
夏美さんが松岡さん好きなのは、見ていて
すぐに分かったけど。まさか松岡さんも
夏美さんのことが好きだったなんて知らなかったわ!?
ニコニコしているけど表情が読み取りにくいし。
「はぁっ?本気か!?松岡君」