噂を聞くたびに、天狗だってバラしてやる!って言っても、誰が信じるよ? と鼻で笑うのだ。
「遠慮します。あ、そうそう、私、今朝、サバの味噌煮食べたんですよぉ」
そういって、上半身を近づけようとすると、秋山さんは眉間を潜めて嫌な顔をした。
「鮭、やっぱり嫌いだったんですね」
又吉の話では、天狗は青魚が苦手なのだという。
『人間でいる間は食べられないことはないかもしれないが、ま、食わないだろうな』
カフェで私が鮭とイクラのクリームパスタを頼んだ時に驚いたのは、そういうことだったらしい。
「別に。好き嫌いくらい、誰だってあるだろ」
天狗の秋山さんは、ツンと澄ます。
「あ、そうそう。又吉が、ここに入社するんですよ」
「はぁ? ったく何しに来るんだよ」
「さぁ?」
ムッとした秋山さんをエレベーターに残し、廊下を歩いていると、海外事業部で人が集まっているのが見えた。
新しく入社した社員の紹介をしている。
スーツを着ている又吉が、澄ました顔で何事か挨拶をしている。
又吉は、世界中をウロウロしている間に、アメリカの国籍を取得してしっかり経歴を手に入れていた。日系アメリカ人。
ナオト・シンギョウジという名前らしい。
『日本の戸籍取るより簡単なんだぜ』
ニヤリと笑っていた又吉も、もしかすると怖い存在なのかもしれない。ちっとも怖くはないが。
「遠慮します。あ、そうそう、私、今朝、サバの味噌煮食べたんですよぉ」
そういって、上半身を近づけようとすると、秋山さんは眉間を潜めて嫌な顔をした。
「鮭、やっぱり嫌いだったんですね」
又吉の話では、天狗は青魚が苦手なのだという。
『人間でいる間は食べられないことはないかもしれないが、ま、食わないだろうな』
カフェで私が鮭とイクラのクリームパスタを頼んだ時に驚いたのは、そういうことだったらしい。
「別に。好き嫌いくらい、誰だってあるだろ」
天狗の秋山さんは、ツンと澄ます。
「あ、そうそう。又吉が、ここに入社するんですよ」
「はぁ? ったく何しに来るんだよ」
「さぁ?」
ムッとした秋山さんをエレベーターに残し、廊下を歩いていると、海外事業部で人が集まっているのが見えた。
新しく入社した社員の紹介をしている。
スーツを着ている又吉が、澄ました顔で何事か挨拶をしている。
又吉は、世界中をウロウロしている間に、アメリカの国籍を取得してしっかり経歴を手に入れていた。日系アメリカ人。
ナオト・シンギョウジという名前らしい。
『日本の戸籍取るより簡単なんだぜ』
ニヤリと笑っていた又吉も、もしかすると怖い存在なのかもしれない。ちっとも怖くはないが。