又吉は見た感じ若い男性だけれど、ときどき臈長けたようなことを言う。白猫の姿でいる時と同じで、言うことも偉そうだしまるでお爺ちゃんのようだ。

「又吉って、何才なの?」
「何才か? うーん。猫又としてはまだ若いな。千年くらいか?」

「ええ? じゃあ平安時代も知っているの?!」
「まぁな、でもあまりに大量の記憶だし、何十年も寝続けてたりするから、ほぼ覚えてないぞ」

「すごい。なんか凄いよ、又吉。それで猫又って何歳くらいまで生きるの?」
「さぁな、二千年とか?」

「猫又って又吉みたいにみんな人間に化けるの?」
「そうでもない。俺は同じ猫又でも優秀だからな、これくらいどうってことないが」

「へぇー」

目の前で人間になった又吉が、澄ましてコーヒーを飲んでいる。
なんとも不思議な光景に、私は混乱するばかりだ。

「そういえば、お前のそのネックレス。どうしたんだ?」

「ああ、これ? 我が家に代々受け継がれているんだって。祖母、母、私。そんな風に二十歳になると引き継がれていくの。なんか偶然だけど、又吉によく似ているよね」

「それ、ずっと昔、見たことがある。多分、何百年か――。もしかすると千年近く前かもしれないな」

「本当に?」

「ああ。あいつも見たことがあるんだろうな。しかし、まさか天狗だったとはなぁ」

「あっ! 秋山さんね。どういうことなの? 秋山さんって人間じゃないってことなの?」