「又吉! すごい! そんなことまで。モデルになれるよ。すごい化けっぷりだもの」

「それ、褒めてんのか?」
「もちろん」

「サンキュー」

それでも信じられなくて、いくつか質問をした。

初めてあげたおやつは何か。私の上司は誰か。

「初めて資子にもらったおやつは"にぼし"、上司は課長の南だろ」
又吉は、なんなく答えた。

「そして、いい加減信じろよ」そう言って笑った。

人間の体でいる又吉は、食の好みも人間らしくなるらしい。猫の時は見向きもしなかったはずの野菜も美味いと言ってもりもり食べたし、フォークとナイフを適当に使いこなして牛肉のステーキもペロリと平らげた。

「南さん。又吉が言った通り、いい人だった」

「ようやくわかったのか」

「うん。こんな細かいことまで?って、思いながら、叱られたくない一心でやってたけど、最近になってその意味が、少しずつわかってきたんだ。結局そういう細かい確認が自分を守ることに繋がるんだなぁって」

秋山さんのこともそうだ。嫌な顔をされたとしても、最初から南さんに言われた通り直接持ってきた仕事を断っていれば、おかしな夢を見ずに済んだのだから。

「まぁお前は騙されやすいし、鈍くさいからな。一緒にいる人間を見極めないとだめだぞ」
「はぁーい」