それから南さんは、五年前にご主人が事故で亡くなったことや、総務部のみんなに励まされ助けられてここまでこれことなども話してくれた。

その年数のどこに秋山さんが入る余地があるというのだろう。

嫉妬だという彼の言った言葉を信じて、南さんを疑った自分が恥ずかしくなった。

「有水さん、実家は遠いんだっけ?」

「関東の外れの山間部なんですよ」

「あら、じゃあ、もしかしたらもう雪が降ってるのかしら」

「ええ。まだ積もってはいないみたいですけど、初雪は降ったみたいです」

そう言いながら、懐かしい故郷を思い浮かべた。
土を盛り上げた霜柱の上を、サクサクと歩く妹たちが目に浮かぶ。

「私、長女で、妹と弟が四人いるんですよ」

「え? すごい大家族」

「はい、一番下はまだ中学生。お年玉を持って、お正月に帰るのが楽しみです」

「そっか、それで頑張れるのね」

「え?」

「有水さん。よく頑張ってる。私の厳しさにもめげずに」

――南さん……。

「前の子は辞めちゃったけど、あなたにはずっといてほしいと思ってる。これからも、頑張りましょう、お互い」

「はい、がんばります!」

――やっぱり南さんは素敵な女性だ、
意地悪だなんて言ってごめんなさい。その分がんばります。
なんて調子のいい事を思いながら、止まったエレベーターに乗り込もうとした。

と、その時

――あっ。