――彼が一緒にいたあの女性は誰? 小嶺さん?
いや、違う。
一刻も早く忘れたい衝撃のラブシーン。
それでも、相手の女性が誰なのかは知りたい。
肩くらいの髪型からして秘書課の小嶺さんではない。小嶺さんの髪はもっと長い。背中の途中まである。
中肉中背のミディアムヘアの女性……。
となると、この会社に該当する女性は何十人もいるだろう。
ピンとくる相手は思い浮かばない。
――はぁ。
そもそも相手がわかったところで、どうなるものでもないんだけど……。
でもこれではっきりした。秋山さんが私にランチをご馳走してくれたりクリスマスに誘ってくれたりしたのは、資料作成を頼みたいからだということが。
だからといって不思議なほど悲しくはないし、涙も出ない。
私はとっくにわかっていた。そこに愛だの恋だのがないことも、気づいていた。
認めたくない気持ちが、どこかにあっただけ。
これできっぱりと想いを絶つことができる。
――又吉のおかげだ。
明日こそ外階段に行って、又吉にお礼を言わなくちゃ。かつおぶしや猫用ミルクをお礼にプレゼントして、そしてあやまらないと。
――ごめんね、又吉。教えてくれていたのに、私、又吉より秋山さんを信じたりして。