冷水をかけられたように心が凍りつく。カタカタと震える体を抱えるようにして、屋上から出た。
扉を閉めると、どこからともなく声がした。


【わかったか? あいつはそういう奴だ】

「又吉?」

【見つかるぞ、すぐに席に戻れ】


一目散に、私は逃げた。
目にした現実から逃れるために、必死で階段を駆け下りた。

女性を熱く抱きしめていた男性は、
秋山さんだったから――。