――え?! なんですと?

驚いた拍子に、フォークからパスタが滑り落ちる。

予想の斜め上のほうから出された理由を、どう受け取っていいのかわからない。
お皿に落ちていくイクラの赤い粒を見つめながら、一旦フォークを置いて考えた。

――南さんが、秋山さんを、好き?

「まいったなぁ。嫌な思いさせちゃったね」

驚いて顔をあげた私に、両手を合わせて秋山さんが頭を下げる。

「ほんとごめん」
「あ、いえいえ、そんな、秋山さんが謝らなくても。いやもう、いままで通りで、だ、大丈夫ですよ。全然負担じゃないですし」
混乱するなかで、私はそう答えていた。

――ま、いっか。南さんに見つからないようにすれば。

そんなことを思いつつ、重たい気持ちを抱えたままデザートのパンナコッタを食べていると、ふと秋山さんの視線が気になった。

いつになく真剣な目をして、食い入るようにジッと見ているのは。

――ん? もしかして、ネックレス?

なんとなく不安になって指先でチャームに触れると、ハッと驚いたように秋山さんが目を見開いた。

「あ、ああ、ごめん。綺麗なネックレスだなぁと思って。金目銀目の猫なんだね」

「ええ、金目銀目?」

「オッドアイのことだよ」

「なるほど、そういう言い方もあるんですね」

「いいなぁ……」

その言い方が妙にしみじみと実感がこもっていて、いやな予感がした。