アルミを開くと、ほんの少し醤油をつけた鰹節の香ばしいかおりが鼻腔をくすぐってくる。

あとのふたつは、じゃこと梅干しを混ぜ込んだものと、鮭マヨネーズをたっぷりと挟んだもの。どれもこれも毎日食べても飽きないし、泣きたくなるほど美味しい。

でも、明太子の具に外側をおぼろ昆布で包んだおにぎりも捨てがたい。
あ、そうそう。次は、肉巻きおにぎりを作ってみようかな。
昨日料理番組で見たレシピによれば、おにぎりに生のお肉を巻いてから、フライパンで甘辛い味を付けながら焼くらしい。なんだかとても美味しそうだった。
なんてことを思いながら、最後のひと口をマイボトルのお茶で流し込む。

――あーぁ、おにぎりもいいけど、せめて恋でもしたいよなぉ。
残念なことに私の人生には、自慢のおにぎりを分け合える恋人がいない。



ある日のことだ。
いつものように隠れ処に行くと、白猫の先客がいた。

晴天の空から降り注ぐ暖かい日射しを浴びながら、体を長くしてゴロンと横になっている。

「あらまぁ」

赤い首輪をしている雄猫だった。
随分と人馴れしているようで、白猫はちらりと私を見上げただけで警戒する様子みせずに、毛づくろいを始める。

「うわー、綺麗な目」

白猫の目は左右で色が違う。珍しいオッドアイだった。
左目が薄いブルー、そして右目は金色に輝いている。艶々と輝くほどに毛並みもよく、なにやら神々しいほどに美しい。

「私は資子、よろしくね、白猫ちゃん」


――そんなふうにして、私と"彼"は出会った。