――又吉めー。やっぱり見間違いじゃないの。



早速次の日、外階段にいた又吉に報告した。

「私が作った招き猫ね。昨日、秋山さんが見せてくれたの。車の鍵に付けてくれていたよ」
【それはおかしいな。そいつは魔物か?】

「なに言ってんの。だから又吉の見間違いだって。でも、仕方ないよ。小嶺さんが持っていたストラップ、よく似ていたもの」
【秋山の言うことを信じるのか】

「だって、この目で見たの。あれは間違いなく私が作った招き猫だった。見間違うはずがないわ。目の前で見たんだから」
【お前は馬鹿だな。救いようがない。これだから人間は困る】

「そんな言い方しなくたっていいじゃない。私の目がおかしいっていうの?」
【ああ、お前の目はついているだけの節穴だ】

「まぁ」

なんて頑固な猫だろう。
自分の間違いを絶対認めようとしない又吉に、ちょっとイライラした。
又吉があんなことを言い出さなければ、私は思い迷うこともなかったし、ずっと幸せな気分でいられたのだ。
秋山さんを悪者にしないで済んだのに。

「ふん。いいでしょ別に、ほっといて」
【勝手にしろ!】

「あ、又吉っ、待って」

又吉はピューっとすごい速さで階段を駆け下りてしまった。


「もう、気が短いんだから……」

猫とケンカ別れというのも変だけれど、その日を境に、又吉は外階段から姿を消した。

気まぐれな秋の空のように――。