イケメンの秋山さんと美人の小嶺さん。考えてみればよく似合っている、並んだらさぞかし様になるだろうと思った。
そう、笑っちゃうほど絵になるだろう……。
ふたりは付き合っているのだろうか? 悶々として、そんなことを考えながら会社を出た。

すると、そこでまたしても偶然、秋山さんにでくわしたのである。

――えっ!

「もとちゃん、いま帰り?」
「あ、は、はい」

ストラップのことがあるので、なんだか気まずい。早々にそのまま「じゃ」と立ち去ろうとした。

「待ってよ、もとちゃん。これ」
振り返ると、秋山さんが鍵のついたキーホルダーを掲げるように見せる。

「あっ」

「目につくものだと、俺には可愛すぎるから、これ、車の鍵なんだ」

――どういうこと?
私がプレゼントした招き猫が秋山さんの車の鍵につけられている。

見間違うはずがない。至近距離なのだから。
小嶺さんが持っていた招き猫。あれは何なんだろう? 近くで見たわけじゃないから、よく似た別の招き猫だったのだろうか。考えてみれば白い招き猫なんてどこにでもあるし、似たり寄ったりだ。作るにあたって参考にした招き猫だってよく似ている……。
いずれにしろとにかく、目の前で揺れているのは私が作った招き猫に違いなかった。

「使ってもらえて、うれしいです」

「招き猫のお陰で、営業成績伸びるかも」
そう言って秋山さんはうれしそうに笑う。

途端に私の心は晴れ渡った。
ここ数日の間、どんよりと心に巣食っていた厚い雲が、秋山さんから吹く爽やかな風でピューっと吹き飛ばされた。
代わりに広がる甘い想い。ああやっぱり素敵、秋山さん。