「そんな……見間違いかもしれないよ?」

又吉の目には、ストラップの違いなんてよくわからないのかも。
きっとそうだと思いたかった。

【俺が間違うはずがない。残念だったな、秋山とはそういう奴だということだ】
「なによ、秋山さんのこと知らないくせにー」

【お前の話を散々聞いたうえで言ってるんだ。お前はそいつに調子よく使われているだけだぞ】
「ひどーーい。おやつあげない。返して」

【あ、なにすんだ。返せ】

散々又吉に文句を言って怒ってやった。。


なのに――。


秘書課に書類を届けに行った時のこと。

「かわいい~、どうしたの?」
「旅行のおみやげにもらったんだって。かわいいから頂戴って、もらったの」

そう聞こえた声。
振り返ると、そこには秘書課でもナンバーワンと謳われる美人の小嶺さんがいて、小嶺さんのスマートホンで白い招き猫が揺れていた。

――あっ!

ひと目でわかった。招き猫は私が作って秋山さんに渡したもの。

それをなぜ小嶺さんが?
そう思っても、小嶺さんに問いただす勇気なんてない。

ショックを気づかれないようにするのが精一杯で、夢中で用事を済ませて廊下にでた。
胸が苦しくて、その場に倒れ込みそうになりながら廊下を足早に進み、悲しみに浸ることができたのはトイレの個室に入ってからだった。

心を込めて作った想いの分だけ、涙が溢れてくる。

――ちゃんと手作りだと伝えておけば、小嶺さんにあげたりしなかったのかな?


もう少し大切にしてくれた?