なんの恵みか、奇跡は起きた。
帰り道、通りに出たところで、会社に戻ってきた秋山さんと出くわしたのである。
「ああ、もとちゃん。今帰り?」
秋山さんは相変わらず爽やかな笑顔を振りまく。
まるで彼の目元からキラキラ光線が出ているようで、私の胸はキュンキュンと飛び跳ねる。
「は、はい。お疲れさまです。あ、あの、秋山さん」
「ん?」
「これ、ストラップなんですけど、ランチのお礼と言ってはなんですが……どうぞ」
「おお、悪いね、気を使ってもらっちゃって」
うれしいことに、秋山さんは破顔して小さな紙袋を受け取ってくれた。
「え? なになに? 開けていい?」
でも、自分で作った物だとは言えない。重荷に感じられたら困るので、とっさに嘘をついた。
「あ、はい。あの、縁起担ぎの招き猫です。旅行先で買った安物なので……」
ストラップを手に取った秋山さんは、「へぇ、かわいいね。サンキュー」と言いながら、ストラップをポケットに入れる。
私の恋心を羊毛と共に詰め込んだストラップは、どこに付けてもらえるのか?
家の鍵? スマートホン?
付けるところがなかったら部屋のどこかに飾ってくれるだけでもいい。机の上に置いてくれるだけでも構わない。別に引き出しの中だっていいのだ。ゴミ箱でさえなければ。
ただ、時々でもいいから、その爽やかな笑顔をストラップに向けてくれたら、それだけで満足。
次の日早速、又吉に報告した。
「昨日秋山さんにストラップ渡せたんだよ? すごくない?」
【ああ、それなら、さっき見かけたぞ】
「え? 秋山さんを?」
【女が、あのおもちゃを持ってた】
――え?
帰り道、通りに出たところで、会社に戻ってきた秋山さんと出くわしたのである。
「ああ、もとちゃん。今帰り?」
秋山さんは相変わらず爽やかな笑顔を振りまく。
まるで彼の目元からキラキラ光線が出ているようで、私の胸はキュンキュンと飛び跳ねる。
「は、はい。お疲れさまです。あ、あの、秋山さん」
「ん?」
「これ、ストラップなんですけど、ランチのお礼と言ってはなんですが……どうぞ」
「おお、悪いね、気を使ってもらっちゃって」
うれしいことに、秋山さんは破顔して小さな紙袋を受け取ってくれた。
「え? なになに? 開けていい?」
でも、自分で作った物だとは言えない。重荷に感じられたら困るので、とっさに嘘をついた。
「あ、はい。あの、縁起担ぎの招き猫です。旅行先で買った安物なので……」
ストラップを手に取った秋山さんは、「へぇ、かわいいね。サンキュー」と言いながら、ストラップをポケットに入れる。
私の恋心を羊毛と共に詰め込んだストラップは、どこに付けてもらえるのか?
家の鍵? スマートホン?
付けるところがなかったら部屋のどこかに飾ってくれるだけでもいい。机の上に置いてくれるだけでも構わない。別に引き出しの中だっていいのだ。ゴミ箱でさえなければ。
ただ、時々でもいいから、その爽やかな笑顔をストラップに向けてくれたら、それだけで満足。
次の日早速、又吉に報告した。
「昨日秋山さんにストラップ渡せたんだよ? すごくない?」
【ああ、それなら、さっき見かけたぞ】
「え? 秋山さんを?」
【女が、あのおもちゃを持ってた】
――え?