【ふぁーーあ。まったく。結局それかよ。それで? 秋山ってやつとは、その後どうなんだ?】

「別に? 仕事を頼まれるだけ。まぁでも、こっそり私だけに頼んでくるの。なんか特別な感じがしてちょっとうれしい」
【なんだ、便利屋か】

「失礼ね。でもいいのよ別に。それで私は満足なんだから。今の距離感がいいの」
【でも、好きなんだろ?】

「まぁね。だけど本気でなにかを期待しているわけじゃないもん。それに、私たぶん結婚しないから。働けるだけ東京で働いてお金を貯めたら田舎に帰って、猫をもっとたくさん飼って、猫カフェならぬ猫ペンションにしちゃおうかなぁと思ってるんだ。それなら寂しくないしね。どう?いい考えだと思わない?」

私は昔からどうやら猫には好かれるらしい。又吉とこうして仲良くなれたように、野良猫ともすぐに仲良しになれるという特技もある。

その分、人間の男性にはさっぱりだけど。

【お前にその覚悟はあるのか? 猫の数だけ金がかかるんだぞ】

結構本気で考えていただけに、ウッと言葉に詰まる。
お金はない。多分この先もずっと、金欠は一生続くだろう。それについては妙な自信がある。
「わかったわよ。その時はお財布とよく相談するわ」
うらめしそうに又吉を睨んだ。

【そもそも、どうして結婚しないんだ? 男なんか、そこらにうじゃうじゃいるじゃないか】