惟子は急に静かになった部屋で、小さくため息をついた。
まったくわからない異界で、あえて明るくふるまっていた惟子だったが、急に一人ぼっちになり心細くなる。
とりあえず今わかっているのは、サトリはこの場にはいないということだけ。
そして一緒に来たはずの、てんもここにはいない。
その現実だけが惟子に襲い掛かかる。
すなわち、この場に惟子が知る人間、いやあやかしは誰もいないということだった。
こんな状況から、どうやってサトリをみつければいいのだろう?
途方に暮れながらも、惟子は先ほどの蛙の太郎の言葉を思い出す。
(この恰好じゃまずいのよね……)
言われた通り、奥の押入れを開けると和ダンスがあり、その中にはいかにも時代劇にでてくる、下働きの女中がきてそうな柄の着物が入っていた。
派手な着物よりこの地味で、誰でも着ていそうなものの方が見つからなさそうだと、惟子は思うとさっそくそれに着替える。
小さいころ、祖母から簡単な着付けを習っておいてよかったと、心底思いながら帯を締めた。
そして、その中に昔、黒蓮と一緒にいたあやかしが付けていたような、歌舞伎の黒子のような顔を隠すものがあり、それも拝借することにした。
もしも隠れたり、顔を隠す必要が出たときに便利かもしれない。
そう思い、現世から持ってきたカフェエプロンのポケットにそれと、メモを取るために、タンスに入っていた紙と筆をしまう。
(以外に違和感ないわね)
着物の上に着けた、祖母から譲り受けた茶色のエプロンは、意外にも前からそこにあったように見えた。
惟子は自分の着物姿を満足げに見ると、スーツケースを押し入れに隠し、リュックの弁当箱はタンスに入っていた風呂敷で包んだ。
ここにどういう仕事をする人がいるかはわからなかったが、とりあえずこれで人間とすぐにばれないだろう。
惟子はそう思うと、そっと廊下へと足を踏み出した。
まったくわからない異界で、あえて明るくふるまっていた惟子だったが、急に一人ぼっちになり心細くなる。
とりあえず今わかっているのは、サトリはこの場にはいないということだけ。
そして一緒に来たはずの、てんもここにはいない。
その現実だけが惟子に襲い掛かかる。
すなわち、この場に惟子が知る人間、いやあやかしは誰もいないということだった。
こんな状況から、どうやってサトリをみつければいいのだろう?
途方に暮れながらも、惟子は先ほどの蛙の太郎の言葉を思い出す。
(この恰好じゃまずいのよね……)
言われた通り、奥の押入れを開けると和ダンスがあり、その中にはいかにも時代劇にでてくる、下働きの女中がきてそうな柄の着物が入っていた。
派手な着物よりこの地味で、誰でも着ていそうなものの方が見つからなさそうだと、惟子は思うとさっそくそれに着替える。
小さいころ、祖母から簡単な着付けを習っておいてよかったと、心底思いながら帯を締めた。
そして、その中に昔、黒蓮と一緒にいたあやかしが付けていたような、歌舞伎の黒子のような顔を隠すものがあり、それも拝借することにした。
もしも隠れたり、顔を隠す必要が出たときに便利かもしれない。
そう思い、現世から持ってきたカフェエプロンのポケットにそれと、メモを取るために、タンスに入っていた紙と筆をしまう。
(以外に違和感ないわね)
着物の上に着けた、祖母から譲り受けた茶色のエプロンは、意外にも前からそこにあったように見えた。
惟子は自分の着物姿を満足げに見ると、スーツケースを押し入れに隠し、リュックの弁当箱はタンスに入っていた風呂敷で包んだ。
ここにどういう仕事をする人がいるかはわからなかったが、とりあえずこれで人間とすぐにばれないだろう。
惟子はそう思うと、そっと廊下へと足を踏み出した。