エレベーターを降りると、ホテルの綺麗さとはうって変わって無機質な作りで、厨房と通路を挟んで社員食堂がある。
社員食堂といっても小さなもので、厨房の調理師とは別の、所謂食堂のおばちゃんが日替わりで食事を作ってくれている。

「まずここの名簿にチェックして…。」

調理場のカウンターにその日の食堂利用者の名簿が置いてあり、来たらチェックすることになっている。

春宮さんが俺に倣ってチェックすると、カウンターからおばちゃんが顔を出した。
いつもニコニコ愛想がいい。

「あらあら～。また可愛い子が入ったもんだねぇ。」
「あのっ。春宮千草といいます。よろしくお願いします。」

「わからないことは土橋くんに聞くといいよー。ベテランだからね～。」
「おばちゃん、適当なこと言わないでくださいよ。俺がベテランなんて聞いたら先輩に何言われるかわからないっすよ。」

おばちゃんは「あはは～」と笑いながら、二人分のおかずを用意し始めた。
その間に、俺は春宮さんに食堂のルールを説明した。