大学へ行って、バイトして、時間があれば寝子池神社へ参拝がてら野良猫たちの様子を見に行く。

俺の目の前で消えてしまった春宮さん。
人間の姿がなくなったことで、春宮さんは猫に戻ったんだと思った。
猫の姿になっても、自分の前に現れてくれるものだと思っていた。
だけど猫の春宮さんの姿を見つけることができなくて、微かな希望を抱いて神社へ通っているのだ。

「まるで百度参りだな。」

自嘲するように薄く笑う。

ほんの半年ばかりのできごとなのに、ずっと夢を見ているようなふわふわした気持ちでいる。
いっそのこと、夢なら覚めてくれればすっきりするのに。

今日も誰もいない、いや、野良猫たちが見守る中で鈴緒を勢いよく振る。
小気味良い乾いた音がガランガランと鳴り響いて、社の中を抜けていった。