「春宮さん!人間になれよ!俺と一緒に生きていこう!だけど…もし猫に戻るなら、俺と一緒に暮らそう!」

もちろん俺の願いは人間の春宮さんとまた一緒に日々を過ごすこと。
だけど無理強いはしたくない。
猫に戻らざるを得ないなら、野良猫なんかにはさせない。

俺の言葉に、春宮さんは目を丸くして、そしてふんわりと微笑んだ。

「ありがとう、土橋くん。」

甘い声で囁いたかと思うと、そっと唇が触れた気がした。
その感覚は一瞬で、もう春宮さんの姿は消えていた。
同時に、木々の掠れる音が聞こえてくる。

何事もなかったかのように時は動き出していた。
けれど俺の胸に抱えられた一枚の色紙が、夢ではなかったことを物語っていた。