言いながら、これはエゴかとも思った。
人間でいてほしいとは俺の勝手な想いであって、春宮さんの気持ちは違うかもしれない。

「春宮さんは、猫に戻りたいの…?」

答えを聞くのは怖いけれど、確認しておかなければいけないことだ。
春宮さんは、瞳を揺らした。

「私は…。」

その時、ガランガランと鈴が鳴り響いた。
鈴緒は微動だにせず、鈴だけが乾いた音を出している。

「…時間みたい。」

春宮さんが儚く微笑んで、似顔絵の色紙を俺の胸に押し付けた。

春宮さんの輪郭がキラキラとし始める。
握っていた手の感覚が少しずつなくなっていることに気付いた。

春宮さんが消えてしまう。
そう思ったら、俺は叫んでいた。