「これ。土橋くんが持ってて。」

春宮さんがすっと差し出したものは、学祭で描いてもらった二人の似顔絵だった。

「私がここに存在してたよっていう証。」

ゆらりと瞳が揺れて、儚く微笑む。
存在していただなんて、消えてなくなってしまうようなことを連想させる言葉をサラリと言う。
そんなのはダメだ。
俺は春宮さんの手をぎゅっと握る。

「俺は春宮さんが好きだ。人間でも猫でも関係ない。お礼を言うために人間になって俺を探してくれてありがとう。俺はこれからも春宮さんと一緒にバイトをしたい。それに、春宮さんは夢があるだろ?動物の看護師になりたいって、俺に語ってくれたじゃないか。ただなんとなく大学へ行っている俺とは違う、ちゃんとした目標がある。だから神様、どうか春宮さんをこのまま人間でいさせてください。」

最後は神頼みになってしまった。
だけど俺は必死なんだ。
春宮さんを失いたくない。

「土橋くん、ありがとう。でも…私は猫だから…。」

「猫でも俺は好きなんだよ。何者でも関係ない。」