車にひかれた猫をダンボールに入れている間にいなくなっていた子猫。
バイト先からかっぱらってきたちくわの煮物をあげたけれど、食べたんだか食べてないんだか。
元気でいるといいなと頭の片隅に思い出として残っていた。

その子猫が、今俺の目の前にいる春宮千草という女の子。

どんなファンタジーだ。
はい、そうですかと受け入れられない。
というか、信じられない。
だって春宮さんは普通の女の子だし、一緒にバイトもしているし、専門学校にも通っているはずだ。

「どうやって猫から人間になったの?」

一番の疑問だ。
突然変異とか?魔法とか?
そんなバカな。

「土橋くんにどうしてもお礼が言いたくて。悩んでいたら私の前に神様が現れたの。」

ここにきて神様とか。
もう中二病といわれても仕方ないだろう。

「…からかってる…訳じゃないよね?」

「真剣に話をしてるよ。」

疑いの眼差しを向けた俺に、春宮さんは真剣な表情を崩さずに話を続ける。