気付くと、まわりにちらほら野良猫がいる。
警戒心がないのか、逃げないどころか近くに寄ってくる猫もいる。

「たこ焼き食べるかな?」

春宮さんがたこ焼きと猫を交互に見つめながら言うので、俺はそれを手で制した。

「野良猫に餌を与えたらダメだよ。可愛いからあげたくなっちゃうけどね。ここに来れば餌をもらえるって学習しちゃうし、他の野良猫も集まってきちゃう。無責任なことをしちゃダメだ。」

俺の言葉に、春宮さんは「そうなんだ」と、しゅんとなった。
しまった、説教じみたことを言ってしまったかも。

自分の言葉をフォローするように、俺は思い出して言う。

「でも実は俺も昔、野良猫に餌をあげたことあってさ。ほら、この辺、野良猫多いだろ?バイトの帰り道、この神社の前で車にひかれた猫がいて。」

言いながら、春宮さんの反応を見る。
猫がひかれた話とかしちゃって、俺の方が引かれないか心配だ。
だけど春宮さんは姿勢を正してじっと俺を見ている。