パントリーの仕事はパントリー内だけじゃなく、手が空けば接客にも入るし、会場の片付けもする。
回りの状況を見て的確に動くことが求められる。

何だかんだで早く終わった宴会場があり、俺は隙を見て片付けに入る。
ワゴンとゴミ箱を持って、一番奥の葵の間へ行く。
葵の間担当の稲垣さんと香月さんが、すでに片付けを始めていた。

「お疲れ様です。ワゴン持ってきました。」

「ありがと、つっちー。」

俺は入口付近にワゴンを置き、ゴミ箱を持って中へ入っていく。
残飯をゴミ箱へ流れ作業のように回収する。
その後ろから、香月さんが同じ食器を重ねて回収していき、ワゴンへ積み込む。

和食だと食器の種類が多い。
集めても集めてもなかなか終わらない。

静かな部屋で三人黙々と作業をしていると、ドンという音が聞こえてきた。
花火が始まったのだ。

「ここから送り火見えるって知ってる?」

この葵の間はちょうど角部屋でベランダがある造りの宴会場なので、稲垣さんが窓を開けながら外に出ろと促す。

「わ、すごい。」

香月さんが驚いたような声を出した。

「つっちーもおいでよ。」

呼ばれてベランダへ出ると、花火と送り火が思った以上に綺麗に見えた。

「こんなに綺麗に見えるなんて。皆にも見せてあげたいね。」

香月さんがうっとりしながら言う。

そうだ、春宮さんにも見せてあげたい。
そう思った俺は、春宮さんの元へ急いだ。