お盆の時季になると、ホテルの裏にある小高い山と池の畔で送り火と花火が打ち上がる。

その日は毎年、ホテルは満室御礼で宴会場も大忙しだ。
6部屋ある宴会場すべてが埋まる。
バイトも総動員で、パントリーもごちゃごちゃだ。

今日も俺はパントリーで事前準備をしていると、夕飯の指示が出た。
エレベーターで地下へ降り社員食堂の扉を開けると、春宮さんがいた。
俺と目が合うと、にこっと微笑む。
思わず俺も頬が緩くなった。

「土橋くんもこの時間だったんだね。」

「うん、久しぶりに一緒だね。」

セルフのご飯と味噌汁をよそってテーブルへ持って行くと、春宮さんも俺の向かい側に食器を置いた。

「一緒に食べよう?」

全然いいよ、全然いい。
そんな上目遣いで言わなくたって、一緒に食べるよ。
なんて俺の心が暴れ出す。

向かい合って食べるのは本当に久しぶりだ。
初めて一緒に食べたときはぎこちなかったなぁなんて思い出してしまう。
まだほんの少し前のことなのに。