竹輪のおかげでなんとなく打ち解けた感があり、今度は春宮さんから話しかけてくる。

「土橋さんは大学生ですか?」
「あのさ、」

俺は一呼吸置いてから、

「同い年なんだから、さん付けじゃなくていいよ。」

今日初めて会って、同い年だけどバイト先では先輩なので、もちろん丁寧に「さん」付けで間違いないのだが、そこはかとなくくすぐったいというか、よそよそしいというか。

「えっと。じゃあ、土橋…くん?」

少し遠慮がちに呼ばれてくすぐったさが増した気がしたが、そこはまあ慣れというやつだ。

「うん。俺は大学一年生。ここからすぐ近くの山の麓に大学あるの知ってる?そこだよ。春宮さんはどこの大学?」
「えっと。私は専門学校です。」

「何の専門学校なの?」
「動物看護です。」
「動物看護?」

てっきり大学生だと思っていたのだが予想に反して専門学校生で、しかも聞き慣れない意外な答えに俺は聞き返してしまう。

「動物の看護師さんになる学校です。」
「知らなかったな。そういう学校があるんだね。じゃあ、春宮さんは動物好きなんだ?」
「好きというか、うーん、なんと言ったらいいか。」

俺の問いかけに一瞬考え込むような素振りをしてから、

「昔助けられなかった猫がいて、未だにそれを引きずっている感じでして。本当は獣医さんになりたいなと思ってたんですけど、私の学力じゃちょっと無理だったから。だから動物の看護師にシフト変更したというかなんというか。いや、だからといって看護師を甘く見てるわけではないんですよ。私ができることは全力で頑張りたいなと思ってるというか、うん、まあそんな感じです」

身振り手振りを加えながら熱く語る春宮さんに、俺は言葉を飲んだ。