ぶえくしゅん!ずびー。

今年の冬はよく冷える。
俺は寒さなのせいなのか生まれ持った鼻炎のせいなのか、よくわからないくしゃみをして空を仰いだ。

空気は冷たいが、風向きが冬の終わりを告げている。
もうすぐ春だ。
この春から大学に進学する。

「春は出会いの季節だなぁ。」

誰に言うわけでもなく、無意識に口先でつぶやいた。

希望する地元の大学に合格することができたため、家から近い。
おかげで高校在学中に始めたアルバイトは辞めずにすんだ。

だからなのか、家を離れて一人暮らしを始める友達やこれからアルバイトを始める友達に比べて、新鮮さは少し欠ける気がした。

ぶえくしゅん!

「さっさと終わらせて中入ろう。」

バイト先の観光ホテルの玄関先を掃除しながら、また俺はつぶやくのだった。