スマホを持ったまま出口へと向かった私は、店の外に出てぶるりと身を震わせた。
咄嗟に出てきてしまったので上着を着ていない。まだ冬と言うには早いけれど、薄手のニット一枚で過ごせるほど暖かくはない。
お店を出てすぐのところに立つと、ちょうどそこにいた男性と目が合う。二十代後半の、サラリーマンだろうか。短い髪は整髪料で軽く整えられており、清潔感のある人だ。
「もしもしー。どうしたの?」
電話口にでると、亜美ちゃんの電話の内容は明日の大学の講義の課題がどこだったかを確認するものだった。ラインだと気付かないかもしれないと思って電話にしたようだ。
今、教科書とノートを持っているわけではないので記憶を頼りに伝えると、亜美ちゃんの教科書にもそれらしきマークがきちんと付けられていたようだ。
「あ、ほんとだ。ちゃんとシャーペンで丸付けてたよ」
「よかった。そのひとつだけだと思うよ」
「助かった。ありがとー」
そんな会話を終えて、店内へと戻る。冷えた体を再び暖かな空気に包まれてホッとしたのも束の間、私はそこで繰り広げられている光景に目が点になった。
「どういうことだよっ!」
「だから、別れるって言ったの。一ヶ月も顔見せなかったくせに!」
「だから、それは事情があって──」
「とにかく、話は終わり」
事情はよくわからないが、そこではミユさんと先ほどの男の人が口論をしていた。ミユさんは首に付けていたネックレスを乱暴に外すと、それを男性に突き出した。
「これも返す」
「なっ」
男の人は絶句した後、はたと気付いたように、となりの席で眉間に皺を寄せたまま、どうすればいいのかと思案している真斗さんを睨みつけた。
「こいつが新しい男? さっき、外から汐里と楽しそうに話しているの見えたよ」
「まじか。そうくるの?」
突然話を振られた真斗さんは、あり得ないとでも言いたげな表情で口をへの字にする。
「違うわよ。真斗君は今たまたま会ったの!」
「どうだか。話が付かなかったときのために、新しい男つれてきたんじゃないの?」
また口論を始めた二人を見て、これはまずいと思った。既に店内でかなり注目を集めていて、チラチラとそちらを見るお客さんが迷惑そうに眉をひそめている。
「ちょっと、ちょっと。スト―ップ!」
咄嗟に出てきてしまったので上着を着ていない。まだ冬と言うには早いけれど、薄手のニット一枚で過ごせるほど暖かくはない。
お店を出てすぐのところに立つと、ちょうどそこにいた男性と目が合う。二十代後半の、サラリーマンだろうか。短い髪は整髪料で軽く整えられており、清潔感のある人だ。
「もしもしー。どうしたの?」
電話口にでると、亜美ちゃんの電話の内容は明日の大学の講義の課題がどこだったかを確認するものだった。ラインだと気付かないかもしれないと思って電話にしたようだ。
今、教科書とノートを持っているわけではないので記憶を頼りに伝えると、亜美ちゃんの教科書にもそれらしきマークがきちんと付けられていたようだ。
「あ、ほんとだ。ちゃんとシャーペンで丸付けてたよ」
「よかった。そのひとつだけだと思うよ」
「助かった。ありがとー」
そんな会話を終えて、店内へと戻る。冷えた体を再び暖かな空気に包まれてホッとしたのも束の間、私はそこで繰り広げられている光景に目が点になった。
「どういうことだよっ!」
「だから、別れるって言ったの。一ヶ月も顔見せなかったくせに!」
「だから、それは事情があって──」
「とにかく、話は終わり」
事情はよくわからないが、そこではミユさんと先ほどの男の人が口論をしていた。ミユさんは首に付けていたネックレスを乱暴に外すと、それを男性に突き出した。
「これも返す」
「なっ」
男の人は絶句した後、はたと気付いたように、となりの席で眉間に皺を寄せたまま、どうすればいいのかと思案している真斗さんを睨みつけた。
「こいつが新しい男? さっき、外から汐里と楽しそうに話しているの見えたよ」
「まじか。そうくるの?」
突然話を振られた真斗さんは、あり得ないとでも言いたげな表情で口をへの字にする。
「違うわよ。真斗君は今たまたま会ったの!」
「どうだか。話が付かなかったときのために、新しい男つれてきたんじゃないの?」
また口論を始めた二人を見て、これはまずいと思った。既に店内でかなり注目を集めていて、チラチラとそちらを見るお客さんが迷惑そうに眉をひそめている。
「ちょっと、ちょっと。スト―ップ!」