自宅のベッドで仰向けになって天井を見つめる。もう何回目か分からないため息がまた勝手に零れた。

「章吾くん、どうしてバレエを辞めるって言いだしたんだろうね」

 俺がベッドを占領しているからか、ユイは俺が勉強するときに使っている椅子に座って、こちらに話しかけてきた。

「憲明くんとの縁がなにか関係しているのかな? シュウくん、どう思う?」

「そうだな」

 自分でも驚くくらいの生返事だった。案の定ユイは頬を膨らませている。

「もう、シュウくん。ちゃんと聞いてるの!?」

「俺さ」

 間髪をいれず口を挟んだので、ユイが続けようとしていた小言はストップした。さっきから自分の胸を覆う得体の知れないこの物悲しさはなんなのか。

「バレエを辞めるときに菜穂子先生をはじめ、いろんな人に『辞めないで』とか『考え直して』とか言われてさ。そのときは『プロでもない俺がバレエを続けようが辞めようが誰にも関係ないし、どうでもいいいじゃん』ってなんか素直に受け取れなかったんだ」

 自分でもかなりひねくれていたと思う。怪我もして、コンクールも断念して、なにもかもが投げやりだった。誰の言葉も響かなかった。

「それなのに、章吾がバレエ辞めるって聞いて、なにげにかなりショック受けてんだよな」

 仰向けになっていた身体をユイの方にごろんと向けて呟いた。先にバレエから逃げ出した俺に、なにも言う資格はないのに、考え直して欲しいと真剣に思った。