なにを言われたのかすぐに頭の処理が追いつかない。自分で言っておいて、予想もしていなかったふたりの反応に唖然とするしかなかった。

「なんだよ?」

 固まっている俺に対して、田島が少し怒った顔を見せた。

「え、いや。なんで……」

「なんでって、お前が自分で言ったんだろ」

「そうだけどさ、わざわざどうして」

「だって友達だろ」

 俺なんかのために、と続ける前に答えたのは森野の方だった。

「なにを悩んでんのかは知らねぇけど、そんな辛気(しんき)くせぇ顔してんじゃねぇよ。いつもあまり自分のことを話さないお前が、わざわざ俺らに言ってきたんだから、よっぽどなんだろ。だから、できることがあれば力になってやるよ」

 俺はこれでもかというくらい目を見開いて森野をじっと見つめ返した。発言した森野は、照れからかさっさと顔を俺から逸らす。

「青春だな」

 田島がからかうようにしてまとめたので、森野は怒って俺は笑った。

 ずっとバレエばかりで、それ以外はどうでもいいと思っていた。ところがこうして、自分が困ったら力になってくれる存在が俺にはいる。正確には、できた。

 バレエにしたって、辞めたとしても心配して思ってくれる人たちがいる。関係ないんだ。バレエとか変な線引きはいらない。

 そして、そんな存在を与えてくれたのは、改めて気づかせてくれたのは、ほかの誰でもないユイのおかげだ。見落としていた、たくさんのものを実感させてくれたのも。

 だから、今度は俺が――。