「どうした、大丈夫か?」

「飯食える?」

 すぐ近くで声が降ってきて、俺は顔を上げた。そこには田島と森野の姿があった。ユイの仕業(しわざ)で学食に同行してから、俺はこのふたりと昼を共にするのが当たり前になっていた。

 俺は眉を寄せ、ゆっくりと姿勢を戻す。そんな俺に森野が聞いてきた。

「なんか、すげー思い詰めてる顔してるぞ?」

「ちょっといろいろあって」

 なんとなく返したのに、その発言で田島と森野が互いに顔を見合わせた。

「え、どしたんだよ。恋煩(こいわずら)い?」

 からかい口調の森野も口ではそう言いながら顔は神妙だった。俺がなにかに悩んでいるのはそんなに珍しいんだろうか。

「そういうんじゃねぇけど」

「けど?」

「ちょっと気になることがあって」

 そこで口をつぐむ。縁に関してはもちろん、ユイのことも話すわけにはいかない。話したところで信じてもらえないだろうが。

 しかしふたりはかまわずに突っ込んできた。

「なんだよ。勉強なら陸が見てくれるぞ」

「お前、なんつー他力本願な。でも気になってることってなに?」

 言葉を迷いながらも、ふたりの真剣な顔に、俺は変に誤魔化すことができなかった。