「ちょっと待て、今ふたり、つった?」

「そうそう。なんかどちらもすごく深刻そうな顔をして参拝してたよ。ひとりずつ来てたからお互い無関係だとは思うんだけど……」

「俺には縁が一本しか見えない」

「え!?」

 二本の線が見えるが、いつもどおり鈴緒のところで折り返してUターンした縁は正確には一本だ。参拝者はふたりいるのに縁が一本とはどういうことだ?

「やってきたのはどんなやつだった?」

「えーっとね、先に来た男の子は背が高くて、私服で……」

 ユイの話すものは特徴と呼べるほどのものではなかったので、あまり参考にならなかった。まぁ、俺も人の特徴を説明するのは苦手なので強く責められない。

 最後は聞き流していると、ユイが「あ、そうだ」と手を打った。

「大事なことを忘れてた。えっと彼ね、左……あ、右か。右目下に泣きぼくろがあったよ」

 そう言って自分の右目下を指差すので俺は目を見張った。なぜなら俺の知り合いにもひとりだけいるのだ、背が高くて右下に泣きぼくろがある男が。しかし、そんな偶然あるのか?

「それで、もうひとりの男の子は」

「シュウくん!」

 俺の考えを遮り、不意打ちで名前を呼ばれ心底驚く。それは近くにいるユイのものではなく声変わりをまだしていない少年のものだった。

「憲明……」

 そちらに顔を向けると、相手は満面の笑みで大きく手を振ってくる、ついさっき病院で名前が出た真鍋憲明だった。そして憲明の顔を見たとたん、ユイが「あー!」と叫んだ。

 なるほど、そういうことだったのか。憲明の左足には青色の縁が絡みついていた。