名前を呼ばれて奥に行くと、俺は下だけリハビリ用のハーフパンツに着替えた。一連の流れはもう頭に入っているので自主的にリハビリメニューをこないしていく。

 ふと部屋の中にあったカレンダーに目をやった。あの満月の日から三日がたっていた。

「調子はどう?」

「大丈夫です」

 様子を見に来た先生に声をかけられたが、あまり集中できない。あとから調べてみると、美由紀さんに会ったあの日はちょうど満月で、次の新月は二週間後だった。

 ユイの話が本当なら俺が縁を見えるのも、そしてユイが見えるのもあと二週間ということになる。それを意識するとずっと落ち着かない。

 だからといって自分がどうしたいのか答えも出せない。ただ時間が過ぎていくにつれ、苛々が募っていく。

「先生」

 とくに会話もなく俺の元を去ろうとした先生に珍しく声をかけた。どれくらい珍しいのかは先生の表情を見ても明らかだ。まだなにも言っていないのに先生の顔は驚きに満ちている。

「どうしたの?」

「あの商店街の中にある月白神社について、なにか知ってますか?」

 突拍子もない質問に先生は不思議そうな顔をしつつも、なにかを思い出そうと目を閉じた。

「うーん、申し訳ないけどあまり知らないねぇ。昔からあそこにあって商店街とも深い関わりだった、ってこの病院ができるときに聞いたかな。前は宮司(ぐうじ)さんもいたみたいで神事やお祭りもしていたみたいだけど、高齢だからか、最近は商店街の振興組合で管理しているらしいよ」

「そうですか」

「どうしたの急に? なにかあった?」

「いえ、ちょっと気になっただけです」

 なんでもない世間話というにはあまりにも話題が奇抜だった。しかし先生はそれ以上は追及せずに、別の話題を振ってくる。