「それで、どうなるの? アルブレヒトは助かるの? ジゼルは?」

「……それは実際に舞台を観たらいいんじゃないか?」

 最後まで言っては面白くない。ユイはこもっていた熱が一気に蒸発したかのごとく急にしおれた。

「シュウくんの意地悪!」

「意地悪じゃないだろ」

 あらすじをささっと説明しただけで踊りだしたくなってくる。個人的にアルブレヒトの見所は断然、第二幕だ。

 後悔と自責の念を抱きながら激しくひとり踊り続ける場面や、幻想的なジゼルとのパ・ド・ドゥなど。ジゼルが精霊なので重さを感じさせないようにリフトさせたり、相手と呼吸を合わせるのが大変だったりする。

「でも、なんでシュウくんはそのアルブレヒトが好きなの?」

「なんだろうな、雰囲気というか踊りが好みというか」

 自分でアルブレヒトと言っておきながらなんとも、はっきりしない。細身で色白だからか、元々の相性か。もちろんプロになるなら、どんな役でもそれぞれの雰囲気に合わせてこなせないといけないのだが。

 ダイナミックな「海賊」のアリのヴァリエーションや「ドンキホーテ」のバジルのヴァリエーションよりも俺に合っている気がした。

「って言いつつ実は俺、アルブレヒトの気持ちがよく分かんねぇんだよな」

 頭を掻いて付け足した言葉に、ユイは怪訝な顔をした。アルブレヒトに思い入れがあるのは事実だし、踊りも好きだ。

 それでも俺は未だにアルブレヒトが理解出来ない。

「ダンサーによって解釈も違うんだよ。アルブレヒトは純粋にジゼルを想って近づいた、って説もあれば貴族の戯れに過ぎない、とか」

 俺は自分なりの答えが出せていない。どうしてアルブレヒトは結ばれないと分かっていてジゼルに近づいたのか。