雨の日が続いていたのであまり実感かなかったが、六月も半ばを迎え、だいぶ日も長くなっている。
俺が目的地に着いたときは午後七時前で、まだ暗くはなかったが山の方が赤く染まって、ほんのり紫色の夜がゆっくりと近づいて来ていた。
「シュウくん!」
駅の入口で名前を呼ばれて顔を上げると、そこには髪をひとまとめにして、ストライプ柄のTシャツにジーンズと、上下共にシンプルな格好をした美由紀さんが笑顔でこちらに手を振っていた。すぐに俺は頭を下げる。
「すみません、急に」
「いいよ。連絡もらえて嬉しかった。またすぐに戻らなきゃいけないけど」
美由紀さんは腕時計を確認した。すぐ近くの駅ビルの中に俺がずっと通っていたバレエ教室がある。美由紀さんは帰国すると、ここでゲストコーチとしてレッスンを受け持っていた。
俺が突然連絡したにも関わらず、こうしてその合間を縫って美由紀さんは駅まで来てくれた。
「とりあえず座ろうか」
美由紀さんに促され、入口のそばにある休憩スペースに歩を進める。日が落ちて少し風も出てきたので思ったよりも不快感はない。
小さな木のベンチが並んでいて、先に中年のサラリーマンらしき男性が座っていたが、俺たちの姿を見るなり立ち上がって、そそくさと行ってしまった。
不自然ではない距離で先に座った美由紀さんの隣に腰かける。そういえばいつも隣に座っているユイとは随分近くに座っているのだとこんなときに感じた。
理由も問わず、黙って俺のあとをついてきたユイは、さっきから一言も話さず俺から見える位置で美由紀さんの向こう側に立っている。
俺が目的地に着いたときは午後七時前で、まだ暗くはなかったが山の方が赤く染まって、ほんのり紫色の夜がゆっくりと近づいて来ていた。
「シュウくん!」
駅の入口で名前を呼ばれて顔を上げると、そこには髪をひとまとめにして、ストライプ柄のTシャツにジーンズと、上下共にシンプルな格好をした美由紀さんが笑顔でこちらに手を振っていた。すぐに俺は頭を下げる。
「すみません、急に」
「いいよ。連絡もらえて嬉しかった。またすぐに戻らなきゃいけないけど」
美由紀さんは腕時計を確認した。すぐ近くの駅ビルの中に俺がずっと通っていたバレエ教室がある。美由紀さんは帰国すると、ここでゲストコーチとしてレッスンを受け持っていた。
俺が突然連絡したにも関わらず、こうしてその合間を縫って美由紀さんは駅まで来てくれた。
「とりあえず座ろうか」
美由紀さんに促され、入口のそばにある休憩スペースに歩を進める。日が落ちて少し風も出てきたので思ったよりも不快感はない。
小さな木のベンチが並んでいて、先に中年のサラリーマンらしき男性が座っていたが、俺たちの姿を見るなり立ち上がって、そそくさと行ってしまった。
不自然ではない距離で先に座った美由紀さんの隣に腰かける。そういえばいつも隣に座っているユイとは随分近くに座っているのだとこんなときに感じた。
理由も問わず、黙って俺のあとをついてきたユイは、さっきから一言も話さず俺から見える位置で美由紀さんの向こう側に立っている。