「去年はクラスが別々だったんだけど、LINEも電話もいっぱいしたし、大河が部活終わるまで待ってふたりで帰ったり、とにかくクラスが離れた分、一緒に過ごしたりしたのよ。それなのに、あいつはどんどん素っ気なくなっていって、いきなり『距離をおきたい』とか言い出して」

 そこで佐原が机を力強く叩いた。物に当たるのはよくないと思うが、そんなこと恐ろしくてルッコめない。

「で、こっちもいろいろ話したり、なだめたりしたんだけど全然駄目で。最後は『別れよう』ってメッセージが一方的に送られてきて、そのあとは既読無視にブロックよ? 超ひどくない!?」

「なにそれ、ひどい!」

 気圧(けお)されている俺の横でユイが力強く答えた。もちろん佐原にユイの言葉は届いていない。ともすると返事をするのは俺しかいないので、ここは流れに合わせておく。

「そうだな」

「でしょ? あいつ最低だよ。そんでそのあと、バスケ部のマネージャーしてた木村と付き合いはじめるし」

「えー!? 佐原さんが可哀相だよ!」

 俺の腕をつかんで……実際は触れないのでつかめないが、ユイが必死で訴えてくる。この状況におかれている俺の方が可哀相だろ。

 しかし佐原はそこまで言いきると、とりあえず言いたいことは言えたのか、少しだけ落ち着きを取り戻した。

「だから、私もさっさとあいつよりもカッコイイ彼氏をつかまえようと思ったわけ。そんであの神社に行ったのよ。理解した?」

 俺はもう頷くしかない。佐原が気合いを入れて月白神社に来た理由はよーく分かった。

「ねぇ、あいつひどいよね? 友達はみんな『最低だよ』とか『別れて正解だよ』とか言ってくれるんだけど、男子の意見も聞いておきたくて」

 長机に身を乗り出して佐原が熱のこもった目で見てくる。俺はこういうとき、どうするのかよく知っている。