「どした?」

「いや、隣のクラスの藤本って付き合ってるやつとかいたっけ?」

 その質問にユイも真面目な顔になり、そっと田島と森野に視線を向けた。

「藤本? ああ、バスケ部の……」

 ぺろりとカレーをたいらげた森野がスプーンを持ったまま視線を宙に浮かせた。そして答えたのは田島が早かった。

「たしか、同じクラスの木村(きむら)と付き合ってんじゃなかったっけ?」

 思い出したように森野が同意する。となると佐原は片思いなんだろうか。それにしたってどうして――。

「あれ? でも佐原とは?」

 今、考えた人物名が森野の口から出て俺は目を見張った。田島がしれっと答える。

「なんか別れたって聞いたけど」

「マジで!? あのふたりって長かったよな?」

 俺をおいて田島と森野で盛り上がりはじめる。どうしてこんなにも詳しいのか。俺が知らなさすぎるのか? とりあえず、少しだけ情報を得ることができた。

「にしてもお前も、そういう話題に興味があるんだな」

 田島に意外そうに言われて俺は焦った。自分でも似つかわしくないと思うのだから、そう言われるのはもっともだ。

「いや、女子が話してたから……」

 苦しいときの女子頼み。その言い分にふたりは納得したのか、あまり興味がなかったのか、話題は切り替わった。

 俺はそっとふたりのうしろにいるユイに目線を送る。するとユイは応えるように力強く頷いた。どうやらもう一度佐原か、もしくは藤本に声をかけてみる必要がありそうだ。