学食に行くと、すでに多くの学生たちで賑わっていてた。俺もせっかくなので今日はパンではなく学食のメニューを食べてみる。

「俺、カツカレーにしようかな」

 券売機の前で指をさ迷わせている森野の発言に俺は耳を疑った。

「あれ? お前、弁当持ってきてなかったっけ?」

「あれは早弁用で二限のあとにもう食った」

 なに食わぬ顔でボタンを押すと、機械音と共に小銭がじゃらじゃらと出てくる。少食の俺には信じられない所業だ。

 ちなみに俺は、男子高校生の弁当箱にしてはかなり小さいものを使っている。バレエをしているから太れない、というのもあったが、これは体質もあるのだろう。

 そんなわけで、俺は森野に続いてきつねうどんを選んだ。田島は弁当なので先に席を探しに行っている。人通りが多いのが気にはなるが、なんとか入口付近の席を確保した。

 多少エアコンが効いているものの、やはり人口密度もあってどこか蒸し暑い。熱いうどんを選択したのを少し後悔しながら箸をつける。

 早速、田島や森野がバレエについていろいろ質問をぶつけてくる。俺は気恥ずかしくなりつつも答えた。面白おかしい切り返しはできないが、ふたりは茶化しもせず、純粋に話を聞いてくれた。

 小学生の頃に「男のくせにバレエをしている」とからかわれた経験もあったし、昨日の佐原のような物言いも珍しくはなかった。だから誰も分かってくれないし、興味もないだろうと勝手に思い込んでいた。

 ユイは田島たちと一緒になって俺の話を聞いては相槌を打っている。

「なあ」

 話が一区切りついたところで、ふと俺からふたりに切り出した。それが意外だったのか、田島と森野はピタリと話を止めて珍しそうにこちらに向く。

 そこまでされると逆に話しづらい。反応したのは田島の方だった。