「えー。シュウくん、一緒に食べなよ! せっかく誘ってくれてるのに!」

 ユイが間に入ってきて懸命に訴えてくる。田島以上にお節介なやつだ。お前は俺の母さんか。

「学食は混んでるだろうし、遠慮しとくわ」

 ユイを無視して断りを入れると、田島は「そうか」と残念そうな顔をして、森野とふたりで踵を返した。しかし。

「シュウくん、学食行こうよ! 私、行きたい! すみませーん、シュウくんこんなこと言ってるけど、照れてるだけなんです。面倒臭がりなだけなんです。一緒に行きまーす!」

「おいっ!」

 足止めするようにユイが田島にまとわりついて必死に叫んでいるので、俺はつい声をあげてしまった。ところが、ユイが見えないふたりの目には、俺が田島らを呼び止める形に映ってしまったらしい。おかげで田島と森野は不思議な顔でこちらを見ている。

 どう取り繕うか悩み、妙な間ができる。俺は観念して視線を落とすとおもむろに口を開いた。

「やっぱり俺も一緒に行ってもいいか?」

 田島の横でユイが嬉しそうに飛び上がった。


「俺たちさ、ずっとお前ともっと話したいと思ってたんだよ」

 学食に向かう途中で田島に言われた言葉に俺は目を丸くした。

「はぁ?」

「いや、お前ってずっとバレエばっかりで、なんか近寄りがたい雰囲気だったけど、だからって冷たいわけでもないし。むしろそこまでひとつのことに情熱注げるのってすげーな、って。ましてやバレエとか俺らにとっては未知の世界すぎるし」

「バレエのレッスンってどんなことすんの? やっぱ、いつも白タイツ?」

 すかさず森野が気になっていたんだ、と聞いてきた。ユイはさっきまで強引に間に入っていたくせに、今は上からこちらをニコニコと見守っている。

 なんだよ、これ。

 上手く言い表せないが、俺はむず痒くなった。中学に上がってからバレエばかりで、特別つるむ友達もいなかった。そんな俺が今更……。