放課後、俺は神社に向かった。昨日の別れ際の件もあって微妙に気まずかったが、ユイに会わないわけにもいかない。

 はっきりしない天気が重い足取りに拍車をかける。そもそも、そこまでして俺に行く義務なんてないはずだ。冷静な自分が囁いてくる。

 それでも俺はユイに手伝うと約束したんだ。また約束を破る真似はしたくない。

 最初は不気味に感じた細い石段を登っていく。その両脇には木々が生い茂り、まるで別世界に繋がっているようだ。広いところに出ると参拝所が目に入る。

 そして定位置といわんばかりにユイは参拝箱のうしろに立ち、遠くを見ていた。その表情はいつもより大人っぽく、思わず目を奪われる。

「シュウくん」

「よぉ」

 しかしすぐに気づかれたので俺は片手を上げた。

「昨日の縁の持ち主、誰だか分かったぞ。その先にあるものも」

「本当!?」

 ユイは目を丸くして声をあげた。それはいつもの調子で、おかげで俺は昨日のことを謝るタイミングを逃してしまった。

 どうしようかと悩んでいると、霧のような細かい雨が降りはじめる。傘を差すまでもないかもしれないが、雲の具合を見ると雨足が強くなるのも時間の問題だ。

 とりあえず俺は傘を差さしてユイを手招きした。

「どうしたの?」

「雨がひどくなるかもしれないから今日は帰る」

「え、まだ話を聞いてないのに」

 しょぼんと身を小さくしたユイに俺は傘を傾けた。