「結果は大事かもしれない。でも結果は、やってみなくちゃ誰にも分からない。最初から諦めてなにもしない人だっているよ? でもシュウくんは、自分を信じて頑張ってきたじゃない。それ自体を否定しないでよ」

 怒涛の勢いで告げるユイの方を改めて向くと、彼女は目線を合わせて優しく笑った。その顔になんだか胸の奥が締めつけられる。

「まだほんの少ししか一緒にいない私がそう思うんだもん。ずっとそばで見守ってきたご家族だって分かってるよ。両親がいない私が偉そうなこと言えないけど、ご両親やお姉さんにもシュウくんの気持ち、ちゃんと伝わってるよ」

「はっきりと言うな」

 あまりにもきっぱりと言いきるので素直に頷けず、俺は鼻で笑った。けれどユイは人差し指を立てて自信満々な顔をしている。

「だって卵を落としてくれてたじゃん!」

「はぁ?」

 まったくもって予想外な言葉が飛び出し俺は目を()いた。いったい、なんの話だ?

「ほら。卵を煮物に落とすかってお母さんが聞いてきたときシュウくん返事しなかったのにちゃんと落としてくれてたでしょ?」

「そんなことでかよ」

 俺は呆れて吐き捨てる。どうせ卵が余っていたから俺の分をしただけで深い意味はない。そんな俺に対しユイは口を(とが)らせた。

「そんなことって。だって卵豆腐は用意してなかったよ。それってシュウくんの好みをちゃんと理解してるからでしょ?」

 ユイの指摘に俺は目を丸くした。特段意識はしなかったけれど、たしかに俺は煮物の卵は好きだが、卵豆腐はあまり好きじゃない。

「きっと家族だから言わなくても伝わることもあるだろうし、それでも口にしないと分からないことだってあるよ。シュウくんの気持ち、今すぐには無理でも、いつか伝えてみたら? それでご両親の思っていることも聞いてみればいいんだよ」