その気持ちがなんとなく伝わってくる。他人にいくら褒められても、やっぱり一番認めて欲しいのは、理解して欲しいのは、きっと家族なんだ。

 そのとき、いきなりドアの向こうからアンが鳴くのが聞こえた。ユイはさっきから俺の隣にいるので、ちょっかいをだしているわけではない。

 翔人はやれやれといった面持ちで立ち上がると、ドアを開けた。

「おい、アン。さっきからなんなんだ。散歩はまだだって言ってるだろ」

 それでも翔人の足元にまとわりつき、アンはなにかを訴えかけて必死に吠え続けている。そして少しだけ距離をとると、またこちらに向かって吠え出す。

 まるでついて来いとでも言っているかのように。

「シュウくん!」

 ユイが叫んだので俺は小さく頷いた。

「なぁ、ちょっとアンについてってみようぜ? なんかあんのかも」

 それは本当にただの直感だった。飼い主である翔人は訳が分からないという表情を浮かべたが、素直に従ってくれた。

 そしてアンのあとを追って階下に下りていく。アンは何度もこちらを振り返っては呼ぶように吠えた。そしてその先はやはり灰色の縁が繋がっていた。

「どうしたんだよ、アン。そこは入ったら駄目なんだって」

 ある部屋の前で止まって吠え続けるアンに翔人は(さと)す口調で告げた。ここだけ引き戸だ。

「なんの部屋なんだ?」

「和室ですよ。畳が傷むからアンは入れないようにしてて。あ、ばあちゃんの仏壇もここに置いてあるんでよかったら」

 そう言って戸に手をかけて少しだけ開けると、アンは戸の隙間に身体をぐいぐい()じ込ませて翔人が止めるまもなく中に入っていく。

 そして急いでドアを開けるとさっきまでの勢いが嘘のように、アンはふすまの前でおとなしく座っていた。そして、その先には――